記憶が鮮明なうちに運動会の振り返り

 うちのクラスの子どもたちが所属する白組が圧倒的な強さで勝ってしまった。どの学年の対抗競技も白が全勝という結果。去年もそんな感じで白組が勝ったんだけど、なんかそういう気のめぐりというか、運気の流れみたいなものが影響してるのかな。よくわからないけど。

 ところで、僕の担任する5年生。1学期の終わりから子どもたちは意識していたリレーで、めでたく勝つことができた。隣のクラスとの合同練習では、どんぐりの背比べな感じもしてたから、どうなることやらとは思っていたけど、みんなよく頑張った。記憶がまだ鮮明なうちに、この結果に至るプロセスを書き留めて振り返っておこう。

僕のクラスが勝った、考えられる要因としては、

①自主学習ノートで速く走るコツや、スムーズなバトンパスのコツを研究していた子が多かったこと。リレーの練習がある種の文化になっていた。

②基本、リレーの練習は子どもたちに任せていた(子どもたちがやる頻度、いつやるかすべて決めた。そこらへんも含めて子どもにまるなげ)が、やる時には常に子どもたちに付き合って「いいね!いいね!」と声かけしていたこと。僕自身、リレー指導の専門性をもっていないので、技術に関する具体的な有効な声かけやアドバイスはできなかった。笑 せめて気分だけはアゲてこ!みたいな感じで、「すごいじゃん!」「センスあるねえ〜」と声かけして、みんなが気持ち良くリレーに取り組めるようにした。改めて、言葉の力って大きいなと思った。

③リオオリンピックの影響。

④クラスの女の子のお姉さんが陸上部所属の中学生でリレーコーチとして、直前の2日間に指導に来てくれたこと。(異学年交流)中学生のめちゃくちゃうまいバトンパスをみて、子どもたちの「あこがれスイッチ」がオンに。すごいパフォーマンスをみて、自分もそうなりたい!とそのすごさに「感染」した子どもたち。学びのインセンティブには「外発的動機」「内発的動機」があるけれど、加えて「感染的動機」ってのもあるのだろうな。

⑤納得いくまでとことん、みんなで作戦会議をしたこと。直前に相手チームにぼろ負けしたことで、子どもたち(+僕)が動揺し、一度決めた走順をクラス全員で話し合って3箇所変更してしまった。しかし、その話し合いの場でモヤモヤしたものを抱えたまま変更に反対できなかった子どもたちも一定数おり、翌日、変更をもう一度考え直して欲しいという訴えが噴出。その訴えを引き取って、再度みんなでまた話し合い、一箇所を除き当初の走順に戻すという紆余曲折を経たこと。一般的には、一度決めた走順を直前で変更するのはセオリーに反することであるけれど、本番にむけてできる限りの作戦を立てたというスッキリ感と納得感を子どもが持てたのはよかったと思う。たとえ負けてもあれだけ話し合って決めたんだから悔いなし!みたいな。

⑥僕がすべての子どもに一律のコミットメントを求めなかったこと。前のブログ記事でも書いたけど、「優勝目指してみんなでゴー!」みたいなノリがしんどい子もいれば、どうがんばってみてもやっぱり走るの苦手みたいな子もいるわけで、そういう子たちに、リレーに命をかけてる多数派と同じコミットメントの深さは求めなかった。その代わりに、自分なりのベストは尽くしてね〜とは伝えた。一時、朝の遊びの時間に、「ほんとは今日の遊びは鬼ごっこなんだけど、みんながリレーの練習やりたいって言うから変えてもいいですか?」という声が出たときに、「数は少ないかもしれないけど、鬼ごっこやりたい子たちの気持ちも真っ当で尊重されるべきだし、そもそもみんなで決めたルールを変えるのであればみんなで話し合って合意を得る必要があるんじゃない?」とクラスの凝集性に僕自身がブレーキをかけて乗らないようにした。多分、そこで僕がそこに乗っかってしまうと、リレー命!の多数派が少数派のコミットメントの低さをなじり始めるということが起きる可能性大だし。

 

とまあ、6つ挙げてみた。

 そして、うれしかったこと。それは、常に練習のときから圧倒的な安定感を見せて1〜2位を保っていた黄チームに対して、常に3位だった白チームが最後まであきらめないで一丸となって土壇場まで練習をつづけて、見事本番で1位に輝いたこと。本番での彼らの走りは、ちょっと神がかっていた。その立て役者になったのが、白チームのKくん。幼いところがあって、男子、女子に対するこだわりがつよく、いままでなかなか男女の壁を越えようとしなかった彼が、白チームを1位にするために「いまは男子とか女子とか言っている場合じゃないんだよ!いつも3位でくやしくない?絶対1位とろうぜ!」とみんなに檄を飛ばし、普段の彼からは想像できないようなリーダーシップを発揮していたこと。そしてその彼の熱に見事にこたえた白チームのメンバーたち。つくづくすごいなあと思った。こういう風に、行事の中で子どもってのは成長していくものなんだね。リレーのあと、泣いてる子どもたちもちらほら。人間ってうれしいときにも涙が出るもんなんだよね。それを身を以て知れただけでも、すごい体験になったね、と僕もほんとうれしかった。

 この経験を糧にして、僕も子どもたちも、ほんとーにいろんな気づきをえることができてよかったな〜。僕自身振り返ってみると、子ども時代、学校に何にも期待してなかったし、運動会とかしちめんどくせーと思うような子どもで、高校の運動会もさぼっていた過去があるので、大人になって教師という立場でこんなに胸があつくなる体験を運動会でするというのは、自分の子ども時代をやり直している感があって、おもしろいものだなあと思っている。

 さて、明日からまた普通の毎日が始まる。ハレがおわって、ようやくケの日々がやってくる。ほっとすると同時に、地に足つけて毎日過ごしていかないとね。ケの日常、楽しみ。

 

 「ドラマは終わりじゃない、筋書きも忘れた。新しいシーズンが来る」