予期せず「責任の以降モデル」

Apple Pencilを使いたくてiPad Proを昨年末に購入してから、授業スタイルの幅がうんと広がってすごくいい感じ。iPadのコントロールセンターに画面収録を追加すると、手軽に講義動画を作ることができるので重宝しています。さて、僕が担任する6年生は、来るべき中学入試にむけて(内部生と言えども入試を受けなければいけないのです)基本的な文章題は解けるようにしておこう!ということで、現在、線分図や面積図の基本に取り組んでいるのですが、その講義動画を早速iPad Proで作ってみました。

 

授業(1コマ40分)の構成としては、

①:ミニレッスン(線分図を使った解法の説明)【5分】

②:自分にあった学習スタイルを以下の3つのコースから選択し学習に取り組む【30分】

(A) 自信がないので先生に教わるコース(担当教員:星野)

(B) 友達同士で教えあって学習を進めるコース(担当教員:隣のクラスの教員)

(C) もっとレベルの高い課題に一人で取り組むコース(担当教員:学習支援員)

※この授業は、学年全員で同じ時間に取り組みました。場所も3箇所に分かれ、3つのコースそれぞれに教員を一人ずつつけて行いました。

③:ふりかえり【5分】

 

の3部構成にしました。算数は個人の学力差が非常に大きいため、同一の課題を全員が同じペースでやること自体無理があります。得意な子たちにとって、足踏みをしなければならない授業ほどつまらないものはないし、わからないままどんどん進む授業はしんどい子たちにとって本当に辛い時間になってしまいます。どんな学力レベルの子も自分の伸びが実感できる授業にしたいと思います。だから、自作テキストも基本レベルの問題から発展レベルの問題まで収録し、その上で授業の中でも自分にあった学習スタイルを子どもたちが自分で選択するシステムにしました。

 

結果的にはこのやり方はとてもうまくいき、学力的に非常にしんどい子が、学習課題を全て自力で解けるようになったことに立ち会えたのは本当にうれしかったです。本人もまさか解けるとは思っていなかったみたいでびっくりしてました。きっと大きな自信になったろうし、まわりも祝福していて、僕も自分のことのようにうれしかったな。

 

授業後、となりのクラスの先生に「『責任の以降モデル』に沿った授業デザインだったね」と言われました。『「学びの責任」は誰にあるのか』という本でそれが紹介されていることは知っていたのだけど、具体的にそれがどういうものなのか未読だったのでわかりませんでしたが、読んでみたら確かに『責任の以降モデル』に沿った授業デザインになっていました。

 

『責任の以降モデル』とは

①教師が焦点を絞った講義をしたり、見本を示したりする(焦点を絞った指導)

②教師がサポートしながら生徒たちは練習する(教師がガイドする指導)

③生徒たちが協力しながら問題解決や話し合いをする(協働学習)

④生徒は個別に自分がわかっていることやできることを示す(個別学習)

の4つのステップからなるモデルのことです。

 

確かに、今回の授業は、

ミニレッスンが、焦点を絞った指導

(A) 自信がないので先生に教わるコースが、教師がガイドする指導

(B) 友達同士で教えあって学習を進めるコースが、協働学習

(C) もっとレベルの高い課題に一人で取り組むコースが、個別学習

というように、『責任の以降レベル』にばっちり対応していました。シンクロだね!笑

 

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でもね。もちろんこの子ができるようになったのは、『責任の以降モデル』だけではない様々な要因があると思うのだけど、線分図という思考ツールを獲得できたことも大きな要因な気がします。数値同士の関係性を図や表にして整理して「見える化」することができれば、算数の文章題は7割解決したも同然です。ただ、「見える化」するための思考ツールを今まで算数の授業でしっかりと教わってこなかったのだと思うのです。改めて、思考ツールとしての線分図や面積図の重要性を認識しました。

 

中学受験を勝ち抜くためには、その問題がどのようなパターンなのか瞬時に見抜き、スピーディー問題を解く中国雑技団的な特殊能力が求められます。だから、学校という場では受験算数を忌避する空気があることは確かだし、授業で線分図や面積図を教えることは、算数を「生き生きした学び」から「無味乾燥な機械的な処理」へ貶める行為と捉えられてしまいがちなのはわかっています。でも、そういう指導が受験指導だから学校現場ではそぐわないという考えで思考ツールを与えないというのは間違っていると僕は思うのです。そこら辺の話、長くなるのでまたおいおい書きます。

 

ちなみに子どもたちにこの授業スタイルについてフィードバックをもらったのですが、ほぼ全員が満足していて、授業していてもかなりの集中度で取り組んでいて、手応えを感じました。講義動画はYouTubeにアップしてカーンアカデミー的に何度も視聴できるようにしたいと思っています。子どもたちにとっての教材になるだけでなく、他の先生たちもこの動画を使ってもらえればいいし、必要ならばブラッシュアップさせたものをどんどん作ってもらってほしいくらいです。この授業スタイル、卒業までしばらく続けていく予定なので、まとまったらちゃんと校内研修で報告したいと思います。